ドラッグストアの売場作り入門!効果的な陳列・レイアウトの基本
ドラッグストアの競争が激化し、また人手不足による業務負荷が増す中で、「売れる売場」を効率的に作り上げることは、店舗運営部の皆様にとって最重要課題ではないでしょうか。
お客様の購買行動を促し、客単価や回遊率を高める売場作りは、単なる商品陳列ではなく、科学的な「顧客導線の設計」と「心理に働きかける陳列技術」が不可欠です。
しかし、日々の膨大な店舗業務に追われる中で、基本を徹底し、売上に直結する改善を継続するのは容易ではありません。
この記事では、大手ドラッグストアやスーパーマーケットの店舗運営部の方々が、人時生産性を高めながら確実に売上を伸ばすための、「ドラッグストアの売場作りにおける効果的な陳列・レイアウトの基本」を、具体的なテクニックと成功の法則に基づいてご紹介いたします。
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商品の補充や品出し、棚替え、改装など、様々な頻度で発生する店舗の”売場づくり”をすべてサポートします。
本資料では、サービスの概要や実績などをまとめて紹介しております。ぜひご覧ください。

売場作りとは?
売場作りとは、「顧客の購買心理と行動をデザインし、売上・利益の最大化を目指す戦略的な活動」と言い換えることができます。
特に、ドラッグストアにおける売場は、お客様が最も長く滞在し、商品の価値を比較検討する「最大の接点」であり、いわば「動く営業マン」としての役割を果たします。
品揃えの幅が広く、専門性も求められるドラッグストアにおいては、どの商品をどこに、どのように配置するか(レイアウトと陳列)、そして、お客様をどのように店舗内へ誘導するか(顧客導線)が、客単価や回遊率に直結します。
売り場作りについて詳しくは、下記の記事もご覧ください。
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売場作りとは?売上を伸ばす基本と今すぐ使える7つのコツ
売場作りの目的
ドラッグストアにおける戦略的な売場作りの主な目的は、以下の3点に集約されます。
売上と利益の最大化
顧客単価(ついで買いやまとめ買いの促進)と買い上げ率(来店したお客様が商品を購入する割合)の向上を図ります。
顧客体験(CX)の向上
目的の商品をすぐに見つけやすくし、ストレスなく快適に買い物できる環境を提供することで顧客体験(CX)を向上し、リピーター創出につなげます。
在庫管理と業務効率の改善
欠品や過剰在庫を防ぎ、品出しや棚替え作業の効率を高めることで、人手不足の中での人時生産性の向上を実現します。
なお、買い上げ率について、詳しくは下記ページをご覧ください。
【関連記事】
買い上げ率とは?計算方法や買い上げ率を向上させる方法
売場作りにおけるVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の役割
効果的な売場作りには、「VMD(Visual Merchandising/ビジュアルマーチャンダイジング)」の概念が不可欠です。
VMDとは、視覚的な要素を通じて商品の価値やブランドイメージを伝え、お客様の購買意欲を刺激するための手法全体を指します。
VMDは主に以下の3つの要素で構成され、それぞれが密接に関連しています 。
VP(ビジュアルプレゼンテーション
店舗の顔となるショーウィンドウや入口付近など、遠くからでも目立つ場所に、テーマ性のある陳列を行い、店舗のコンセプトや世界観を伝え、入店率向上につなげます。
PP(ポイントプレゼンテーション)
訴求力の高い商品や、季節・トレンドの商品を、店内の目立つ場所(ゴンドラエンドや平台など)に展示し、お客様の足を止める役割を果たします。
IP(アイテムプレゼンテーション)
陳列棚や什器を使って、商品をわかりやすく、取りやすいように並べる手法です。
商品の正面を揃える「フェイシング」や、カテゴリごとに区切る「ゾーニング」などがこれに当たり、買いやすさと探しやすさを提供します 。
これらのVMD要素を戦略的に活用することで、ドラッグストアの幅広い商品群の中でも、お客様に「この商品を買いたい」と思わせる魅力的な売場を構築し、売場作りの目的達成に大きく貢献します。
なお、「VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)」について詳しくは、下記の記事をご覧ください。
【関連記事】
VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)とは?基本や効果的に行う方法を解説!
ドラッグストアの売場作りにおける共通の課題
ドラッグストアの売場作りにおける共通の課題として、以下の3点が挙げられます。
人手不足による売場メンテナンスの質の低下
慢性的な人手不足、特にパート・アルバイトの確保が難しくなっている状況では、接客やレジ業務といった日々のコア業務で手一杯になりがちです。
その結果、以下のような売場メンテナンスの質の低下が起こります。
- 陳列品質の低下(乱れ)…ゴールデンゾーンへの売れ筋商品の配置や、商品の正面を向ける「フェイシング」が徹底されず、視認性が悪化してしまいます。
- 欠品の発生…売れ筋の在庫管理が行き届かず、「機会ロス」を引き起こしてしまいます。
- 棚替えの遅延…季節やトレンドに合わせたタイムリーなレイアウト変更やプロモーション実施が難しくなってしまいます。
データに基づいた効果測定と改善サイクルの欠如
多くの店舗では、「経験や勘」に基づいた売場変更が行われがちです。
売場変更を実施したとしても、その後の「どの商品が、どのくらい売れたか」というデータを客観的に分析し、次の施策に活かすPDCAサイクルが確立されていないケースが多く見られます。これにより、非効率な作業が繰り返され、改善が進まないという問題が生じます。
本部指示と店舗現場の状況の乖離
本部のマーケティング部門やマーチャンダイジング部門が作成した「陳列・レイアウト指示(VMD指示)」が、店舗ごとの売場面積や導入什器の違いから起こる陳列スペースの過不足や顧客層、現場の人員体制に合わず、「指示通りに実行できない」という乖離が発生することがあります。
店舗運営の効率化には、指示の標準化だけでなく、現場の実行可能性を高めるための仕組みが必要不可欠だといえます。
売上を伸ばすドラッグストアの売り場作り
売上を伸ばす売場作りには、「レイアウト構造」「視点」「顧客導線」という3つの視点からのアプローチが重要です。
最適なレイアウト構造
商品の陳列位置は、お客様がその商品を「手に取るか否か」に決定的な影響を与えます。
最適なレイアウト構造の設計においては、ゴールデンゾーン(ゴールデンライン)の活用が最も基本的な戦略の一つとなります。
ゴールデンゾーン(ゴールデンライン)とは
成人の平均的な目の高さから腰の高さにかけての、最も商品が見やすく、手に取りやすい陳列範囲のことです(身長160~170cmの成人が自然な姿勢で目にする高さ:床から約75~135cm)。
このゾーンに配置された商品は、他の棚段と比較して圧倒的に購買率が高くなります。
ゴールデンゾーンには、最も売れ筋の商品や、注力して販売したい高単価・高利益の商品を集中して配置するのが鉄則です。
- 上段(目の高さより上)…視認性は高いものの手が届きにくいため、ブランドのメイン商品やパッケージ訴求力の高い商品、または棚割りの基準となる商品を陳列し、ブランドイメージを訴求します。
- 下段(腰より下)…かがむ必要があるため購買率が下がりますが、価格訴求品や容量の大きい商品、または子ども向け商品(彼らの目の高さになるため)などを配置し、ボリューム感やお買い得感を演出します。
ゴールデンゾーンへの商品配置と同時に、お客様がそのゾーンにスムーズに到達できる主通路(メインゴンドラ)の設計が重要です。
店舗の奥にある必需品(マグネット商品)へと誘導する導線を意識することで、ゴールデンゾーンでの購買機会を最大化します。
「ゴールデンゾーン」について詳しくは、下記の記事をご覧ください。
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ゴールデンゾーン活用術!基本と売上を伸ばす陳列テクニックを紹介
意識するべき重要な視点:カテゴリーマネジメント
カテゴリーマネジメントとは、商品を「お客様(消費者)の視点」から、一つのまとまり(カテゴリ)として捉え、売上・利益の最大化を目指す管理手法です。
顧客ニーズ起点で考える
メーカーの都合や商品分類ではなく、「お客様がどのような時に、何を求めているか」という顧客ニーズを起点に、棚割りを計画します。
たとえば、「入浴剤」という分類ではなく、「リラックス・癒やし」「疲労回復・温浴効果」といった機能や目的別に分け、選びやすさを向上させましょう。
データ活用
POSデータや需要予測データなどに基づき、カテゴリごとの売上貢献度、利益率、回転率を分析し、棚のスペース配分を最適化します。
これにより、欠品による機会ロスを防ぎ、在庫効率を高めることができます。
カテゴリーマネジメントについては、下記の記事もご覧ください。
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カテゴリーマネジメントとは?ステップや考慮するべきポイントを解説
顧客導線を意識したゾーニングの考え方
ゾーニングとは、店内のスペースを用途や商品カテゴリ別に区画分けすることです。
お客様の「買い回り」を最適化するために行います。
必須(必需)商品の配置
トイレットペーパー、洗剤などの生活必需品は、店舗の最も奥や両端に配置する「マグネット戦略」を用いましょう。
これにより、お客様は必需品を求めて自然と店内を広く回遊することになり、途中の「衝動買い商品」に出会う機会が増えます。
関連商品の隣接配置
風邪薬の近くにマスクや栄養ドリンクを、化粧品の近くに美容サプリメントを配置するなど、関連性の高いカテゴリを隣り合わせることで、「ついで買い」を誘発し、客単価を向上させましょう。
買い上げ率を高める商品陳列のテクニック
お客様が商品を「発見し」「比較し」「手に取る」までの行動をスムーズに促すためには、買い上げ率を高める商品陳列のテクニックが不可欠です。
関連商品をまとめて陳列する「クロスMD(クロスマーチャンダイジング)」
クロスMD(クロスマーチャンダイジング)とは、異なるカテゴリの商品を意図的に組み合わせて陳列し、「ライフスタイルの提案」としてお客様に訴えかける陳列手法です。
ゴンドラエンドでのテーマ提案
たとえば、ゴンドラエンド(通路の突き当り)に、「花粉症対策コーナー」として、内服薬、点鼻薬、マスク、空気清浄機関連商品などを集めて陳列します。
季節の提案
夏場であれば、飲料水コーナーの近くに日焼け止めや冷却グッズを陳列するなど、季節の変化に対応した提案を行いましょう。
顧客の視線を集める「エンド陳列」の活用法
エンド陳列(ゴンドラエンド)は、店舗内で最もお客様の視線を集め、衝動買いを誘発しやすい売り場です。
目玉商品の訴求
エンドには、期間限定のプロモーション商品や、テレビCMで話題の商品など、来店客の「注目を集める目玉商品」を配置しましょう。
ボリューム陳列
商品を山積みにするなど、ボリューム感を出して陳列することで、「お買い得感」や「人気商品であること」を直感的にアピールしましょう。
なお、「エンド」について詳しくは、下記の記事をご覧ください。
【関連記事】
小売店の「エンド」売場とは?エンドの種類や小売店の意図・役割について解説
季節やトレンドを反映させたイベントコーナーの作り方
お客様の「今のニーズ」に応じたイベントコーナーを設けることで、売場に新鮮さを与え、来店頻度を高められます。
時事性を取り入れる
たとえば、インフルエンザの流行、花粉の飛散開始、台風シーズンなど、時事的な情報と関連付けた商品をまとめて陳列しましょう。
POP・販促物の徹底活用
目を引くPOPやキャッチコピーを使用し、「生活シーン別に、商品の活用法やオススメできる理由」を明確に訴求することで、商品の購入を後押ししましょう。
店舗の課題解決のサポートに!エイジスグループのマーチャンダイジングサービス
人手不足が深刻化し、本部からの指示が現場で実行されにくいという課題を解決するためには、外部のプロフェッショナルによるサポートも有効な手段としておすすめです。
ドラッグストアやスーパーマーケットの店舗運営部が抱える「陳列・棚替えの実行力低下」「データに基づいた改善サイクルの欠如」といった課題に対し、エイジスはマーチャンダイジングサービスを通じてサポートを提供しています。
エイジスグループのマーチャンダイジングサービスで実現できること。
陳列・棚替え業務のアウトソーシング
本部指示に基づいたプロによる棚替えや商品の陳列・整理を代行することで、店舗スタッフは本来の接客や専門的な業務に集中できます。
売場メンテナンスの質の均一化
複数の店舗で陳列の質を均一に保ち、全店で高いレベルの売場作りを実現します。
データに基づく検証と改善
サービスを通じて得られた現場のデータや実行状況をフィードバックし、本部と連携してより効果的な棚割り・レイアウトの改善サイクルを構築します。
エイジスのマーチャンダイジングサービスについて、詳しくは下記ページをご覧ください。
https://service.ajis.jp/service/merchandising.html
まとめ
ドラッグストアの売場作りは、「顧客導線の設計」「心理に働きかける陳列技術」「データに基づいた継続的な改善」の3要素が揃って初めて「売れる売場」となります。
特に、人手不足と激しい競争の時代においては、基本を忠実に実行し、陳列・レイアウトの最適化を通じて人時生産性を高めることが、店舗運営部の皆様にとって最優先事項です。
本記事でご紹介した陳列・レイアウトの基本原則を活用し、貴社の店舗の売上向上と業務効率化を推進してください。
また、実行力に課題がある場合は、エイジスグループのマーチャンダイジングサービスといった外部の専門家との連携もご検討いただくことをおすすめします。

