小売店の「エンド」売場とは?エンドの種類や小売店の意図・役割について解説
小売店舗の中で一等地と呼ばれる「エンド」。ここに何を、どのように陳列するかで、売上だけでなくお客様の記憶にも残る店舗作りが可能です。
本記事では「エンド」と呼ばれる売場での小売店の意図、役割、仕掛け、販売テクニックについて解説します。
エンドとは?
小売店における「エンド」または「エンドキャップ(End Cap)」とは、店舗内の通路沿いに設置されている端の棚を指します。長い商品棚(テーブル)の端(エンド)に位置するため、「テーブル・エンド」や「エンド陳列」とも呼ばれます。
売場の中でも、一番目立つ位置にある“一等地”です。従いまして、ここに“自信ある商品”を置き、一貫性のあるテーマをもって商品を陳列し、来店客に新しいライフスタイルや新しい用途での使い方を提案することは、店舗の重要な使命といって良いでしょう。
逆にエンドが、ただ多品目でテーマも統一されていない商品が、雑然と並べられているだけである、または来店客のほとんどが興味を持てない商品の単なる“置き場”になっていたとしたら、来店客に与える店舗イメージに、大きな悪影響を与えます。
エンドは来店頻度から計算して、客が訪問する回数の2~3回に1回は変化させ、常に飽きさせない工夫が必要です。
店舗にとっては、まさに“勝負服”ならぬ“勝負棚”というべき場所です。
エンドの種類
①フロントエンド: レジ向かい側にあり、重い・かさばる商品や話題の商品を陳列する
②バックエンド: 店奥側の主通路沿いエンドで、テーマをもって新しい提案をする。
③センターエンド: 中通路沿いにあり、新商品や関連商品を訴求する。
④レジエンド: レジ待ちしている来店客に、ガム・飴・菓子など細かい商品の“ついで買い”を誘い、電池など“買い忘れ”需要がある品目を訴求する。
エンドは「平台」などの島(アイランド)陳列と並んで、「定番(ステープル)」ではなく「非定番(プロモーショナル・シーゾナル)」です。
主通路沿いで、客層を問わず高頻度で購入する商品がある第一磁石の売場(ドラッグストアだったら医薬品、スーパーマーケットだったら生鮮品といったその店舗へ来店する動機に直結した売場)。主通路の突きあたり角で、低価格単品大量陳列や、華やかな装飾や季節感を訴求して、来店客を店舗奥へと誘導する役割を持つ第二磁石の売場につぐ「第三磁石」の売場とされています。
定番売場は最低13週間、商品構成(棚割)を維持する売場であるのに対し、非定番売場は13週間以内に変化する売場です。従ってエンドで陳列する商品は、13週以内に売り切る商品で、できるだけ品目数を絞って(1~3品目が理想的、最大5品目程度)安さ・季節・話題・新発売、新提案・期間限定お買い得といった様々なエキサイティングな“刺激”を組み合わせ、訴求することが重要です。
エンドの役割
その1、季節商品を目立たせ「シーズンファストバイ」を売り逃さない。
季節の変わり目で、次の季節商品を目立つようにエンドや島で展開して、来店客に「そういえば、あの店であの商品が、山積みされていたな」とイメージを植え付けることは、その季節商品の売れ行きを大きく左右します。
いざ客がその商品が「必要」だと判断したとき、記憶の中からエンドのイメージがよみがえり、来店していただける動機に繋がります。
衣料品のユニクロさんが、意識的に次の季節商品を大量展開して「期間限定の値下げセール」(しかも売価は必ずシーズン突入時に元に戻すことにも注目!)を行うことや、コンビニエンスストア各社が、まだ暑さの残る初秋から競って「中華まん」や「おでん」を展開するのは、この「シーズンファストバイ」の効果を最大限に出すためです。
季節商品の機会損失を防ぐためには、気温や湿度によって需要が急増する以前に、早期展開することが重要です。風邪薬を例にとると、一人当たり年間購入回数は2.3回と低く、「シーズンファストバイ」の時期に売り逃すと、風邪薬の販売チャンスは、残り1.3回の購入回数に半減してしまいます。
このように季節商品の「年間購入回数」は意外と低く「シーズンファストバイ」を売り逃さないことこそが、季節商品にとって最大の売上対策であることがわかります。
その2、新商品・話題の商品・SB・PBを展開して、衝動買いから固定客を創出する。
TVのCMやSNSで、ヘビーローテーションで紹介されている新商品、メーカ推しの販促商品を大量に展開することや、メーカと新しく共同開発したSB(ストアブランド)やPB(プライベートブランド)を大量に展開して、その商品の認知度を上げて衝動買いを促すことも、エンドの重要な役割の一つです。
またSBやPBのモデルとなったNB(ナショナルブランド)と並べて陳列し、価格面と機能面を比較したPOPをつけて併売することで、NBからPBへの買い替えスイッチの提案や「クロス・マーチャンダイジング」で関連購買を訴求する売場としても、エンドは最適な場所といえるでしょう。
「クロス・マーチャンダイジング」は、主役商品の使用シーンをメインテーマとして、エンドで関連商品と一緒に陳列することで、主役商品だけでなく関連商品も同時購買していただくことを目的としています。
そのために重要な考え方が、「TPOS」です。
<TPOS>
・Time どんな時に。
・Place どんな場所で。
・Occasion どんな動機で。(本当な何をしたくて)
・(Life)Stile どのように。(どんなライフスタイルで)
客の「その商品を使う立場」に立って、どんなタイミングで、どんな場所で、どんな目的で、その商品を使って「なし遂げたい“コト”は何なのか?」を考え、最適な効果を出せる商品の組み合わせ(アソートメント)を提案することが重要です。
例えば、「鍋料理」というテーマなら、鍋つゆと新商品NBの鍋用ラーメンを組み合わせ「鍋にあう〆ラーメン」といったテーマで陳列してみたり、PBとNBで同じ味の鍋つゆを組み合わせ「どっちがお好み?」と比較購買させる陳列をしてみるなど、仕掛けは様々考えられます。
来店客に「この(用途にかなう)商品があるのは、あの店だな」と、わが店を連想させる「記憶に残るエンド」ができれば、来店する動機に繋がり固定客になっていただける可能性が増すでしょう。
その3、エンドで来店客を足止めし、中通路の定番売場へ引き込む。
今、巷で“バスっている“話題の商品や、期間限定のコレクション特売や、目立つPOPや販促装飾で、とにかくエンドで来店客を立ち止まらせることで、中通路にある定番商品に気づいて頂く”きっかけ”を作ることも、エンドの狙いの一つと言えるでしょう。
第一磁石の売場がある主通路は、来店客の平均通過率が約70%に達するのに対し、定番売場のある中通路の通過率は、平均約9%~30%と主通路と比較して大きく減少します。
来店客の1回当たりの買上点数を増やしていただくために、魅力的なエンドで足止めし、来店客を中通路へ誘導することで、売場全体の回遊率を高めることが重要です。
また定番商品は、店舗の利益の大半を稼いでくれる「厚利幅商品」が多くあります。赤字覚悟の特売品だけでなく、定番商品の買上点数を増やす努力は、店舗の利益率を上げる効果が期待できます。
エンドで訴求すべきポイント6つ
①ニュース(新製品)②ディスカウント(低価格)
③ホット(話題性)
④シーゾナル(季節性)
⑤ライフスタイル(新提案)
⑥コレクション特売(購買頻度が低い高単価商品を期間限定で特売)
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、「エンド」と呼ばれる売場での小売店の意図、役割、仕掛け、販売テクニックについて解説しました。
エンドは、単に商品を大量に並べてある場所というだけでなく、新商品の紹介、期間限定で特売して売りたい商品の認知度を上げる、季節商品を売り逃さない販売テクニック、商品の組み合わせや新たな活用方法の提案、中通路の定番へ誘導させる仕掛けなど、様々な役割を担っている売場であることが、おわかりになっていただけましたでしょうか。
エンドは、店舗側が意図して
「この商品をもっと知ってほしい!」
「新しいライフスタイルや使い方を提案したい!」
「魅力ある商品に気づく“きっかけ”になってほしい!」
といった店長さん、店員さん、バイヤーさん、マーチャンダイザーさんの“想い“が、一番伝わる売場でもあります。
来店客から支持を集めるチェーンストアには、必ず魅力あるエンドがあります。
ぜひ、チェーン各社のエンドの“違い”を楽しんで、買い物してみてください。
新たな発見が、きっと見つかります。
エイジス営業部 菅沼和彦(文責)