「セルフレジと不正」 第4回 セルフレジ不正の手口

セルフレジと不正①

コラム「セルフレジと不正」シリーズでは全5回にわたり、セルフレジを使用した不正の現状や対策について解説していきます。

第4回では、セルフレジ不正の手口について紹介していきます。

セルフレジ不正の事例

セルフレジを悪用しての不正の手口はさまざまです。有人レジに比べるとはるかに買物客による作業が多いため、当然ながら不正の機会は多く存在します
一方で悪意もなく恣意的ではないセルフレジの操作ミスも存在します。その識別はなかなか困難な部分があることは言うまでもありません。

実際に犯罪として立件された(ネットニュースに取り上げられた)事例を見てみましょう。

▼福岡県警門司署は北九州市立中学校の教員の男(62)を窃盗容疑で現行犯逮捕したと発表した。男性は、スーパーの「セルフレジ」で一部の商品だけを精算し、店を出たところで保安員に現行犯逮捕された。窃取したのは、チューハイやウイスキーなど6点(1223円相当)の商品。警察の調べに対し、「ピッという音を聞いて、レジを通ったと思っていた」と容疑を否認した。しかし、調べが進むと容疑を認め、前日と前々日にも同様の手口で商品を盗んでいたことも判明。男性教員は不起訴となったが、3月に懲戒免職された。

▼宮城県塩釜市に住む女性Aさん。コンビニのセルフレジで不正な行為により商品を盗もうと考えました。カゴに入れた商品すべてのバーコードを読み取ったかのように装い、実は一部の商品のバーコードを読み取らずに買い物袋に入れ、そのまま店を後にしました。  売上金額と商品の数が合わないことから、店側と警察が防犯カメラを調べたところ、女性客が一部の商品のバーコードを読み取らせていない様子が映っていました。さらなる捜査の結果、その女性客がAさんであることも判明。Aさんは、宮城県塩釜警察署の警察官によって逮捕されました。

▼埼玉県警の警察官が商品をセルフレジを悪用して盗んだとしたとして減給3か月の懲戒処分を受けました。警察によりますと、処分を受けたのは草加警察署の地域課で勤務していた40代の男性警部補で、さいたま市のスーパーでおよそ300円のゼリーを不正に窃取したということです。警部補は、レジの作業や支払いを客自ら行うセルフレジに食料品を持ち込み、およそ3000円を支払いましたが、このときゼリーのバーコードだけ読み込まずにバッグに入れていたということです。警部補は、過去にもこの店舗のセルフレジで同じような不正行為をしたとして注意を受けたことがあり、店が警戒していたということです。当時は勤務時間外で、警部補は警察の調べに「不正をした事実は間違いない」と話し、反省の言葉を口にしていたということです。懲戒処分を受けて、警部補は依願退職しました。

▼米俳優のアダム・ワイリー(39)が、スーパーマーケットで万引をした疑いで逮捕された。アダムはカリフォルニア州バーバンクにあるスーパーマーケット・チェーンのターゲットで、セルフレジで購入しようとした沢山の健康・美容用品のうちのいくつかをスキャンしなかったのを目撃され、警備員に呼び止められたという。  TMZ.comによると、店の外で声をかけられたアダムは店内に連れ戻され、108ドル(約1万6000円)相当の商品を盗んだとされ、現地の警察に窃盗で逮捕された後、釈放された。

セルフレジと不正3 セルフレジ写真.jpg

セルフレジ不正の6つの手口

上記の例のように一般的な手口は商品のバーコードを読ませないということです。その方法もひとつだけではありません。これからその手口についてひとつひとつ説明していきます。


①スキャン飛ばし
・スキャナーを通さずに(バーコードをスキャナーからずらして、その横を移動させるなど)スキャンしたふりをする。
・バーコードを手や他のもので隠すか、バーコードのない面をスキャナーの前に通し、スキャンしたふりをする。
・小型の商品を手に二つ持ち、一つだけスキャンして一緒に袋に入れる。

この場合、先のふたつの事例ではスキャンの音がしません。しかし、多数のセルフレジが作動しているときに、店舗のサービス担当者が、ひとつひとつのスキャン音を確認するのは大変難しいことです。また、バーコードをスキャンしたはずだと強弁されると、その主張を覆すのはそう簡単なことではありません。


②カート下の商品残し
・ショッピングカートの下段に置いた商品をスキャンしない

単純に買物客が忘れていたのかもしれず、恣意的な行為であっても、「うっかりしていた」といわれれば、過去に同様の手口で不正を行っていたことを画像で持っているといったことでない限り、それ以上の追及は難しいです。もちろん、これは有人レジでもレジ担当が見落とす可能性があり、それも故意なのかどうかもわかりません。


③バーコード偽装
・商品のバーコードの上に、異なる商品(もしくはあらかじめ用意したバーコード)を重ねてスキャンする(高額の商品をより安価なバーコードで登録する)。
・6缶パックのバーコードではなく、缶のバーコードをスキャンする。
値下げシールを貼りかえる

スキャン飛ばしとの違いは、スキャン音が鳴るという点です。しかし、スキャンした商品と、実際に通過した商品が異なるわけです。6缶パックのバーコードでは、その可能性がないわけではありませんが、それ以外は偶然起きることは非常にまれです。つまり多くの場合、明らかに犯行を意図していたといえます。特に異なる商品を重ねたり、あらかじめ用意したバーコードを使用している場合は、犯人にとって申し開きはできないともいえます。


④未精算退店
・スキャンするが精算せずにすべて持ち去る。

すべての商品が登録されているために、セルフレジサービス担当は不正の疑いがないと油断していると、この手口を見逃す恐れがあります。商品スキャンをレジ担当がして、お客が支払い精算をするタイプのいわゆるセミセルフでの同様の犯行の例は多くあります。「かご抜け」などと呼ぶこともありますが、他の不正に比べて被害額が大きく看過できないものです。
サービス係がいるフルセルフレジに比べるとセミセルフレジの方が犯行はしやすいといえるでしょう。ただし、セミセルフレジでは、比較的長い時間レジ担当に顔を見られている点が異なります。

犯人にとって、レジ精算の場所から出口までの経路によっては逃走の難易度が異なります。原則としては、出入口は少なくし、可能であれば入口と出口を別に設けることが望ましいでしょう。もちろんお客にとっての利便性を損なわない程度にということを忘れてはなりませんが。


⑤未精算商品の持ち去り
・店内カゴに残った未精算の商品を精算後の商品と一緒に持ち去る
・未精算の商品を入れたマイバッグ(エコバッグ)をセットし、重量センサーを欺く。

バッグをセットした段階で重量センサーは、バッグに何かが入っているかどうかを識別できません。
あくまでも商品のスキャンデータと、次にその商品がバッグに入れられたときの重量の変化データがバーコードスキャンと対になったことを確認するだけであるために、このような手口が成り立つわけです。



⑥プリセットキー操作不正
・プリセットキーで実際よりも少ない数量を登録する。
・プリセットキーで実際の商品よりも安いものを選択する。

プリセットキーとは、バーコードのない商品を登録するためのもので、用意された商品キーと数量を押すことで登録されるものです。ほとんどの商品にはバーコードがありますが、1本(個)単位で販売することのある野菜や果物(例えば、きゅうり、たまねぎ、ニンジン、りんご、なしなど)にはバーコードがないので、これらにはプリセットキーはよく使用されます。
アメリカでは、デリカテッセンなどを中心に量り売りするものがあり、セルフレジでその重さを計ることで登録精算する場合があります。量り売り商品の中では安価なバナナが不正に利用されることがあるので「バナナトリック」などと呼ばれることがあります。


これらの手口は、法的には窃盗だけではなく、一部は詐欺罪が適用されます。詐欺罪には罰金刑がなく、それにより窃盗罪よりも重罪とされていることがわかります。

レジ不正に関係する法律用語は次の表に示しています。

セルフレジと不正3 レジ不正に関する法律用語1.png

セルフレジと不正3 レジ不正に関する法律用語2.png

セルフレジと不正3 レジ不正に関する法律用語3.png
*未必の故意:実害の発生を意図するものではないが、自分の行為として実害が発生しても構わないという行為の心理状態を指し、刑事裁判上では故意があるものとして裁かれる。


モバイルレジ不正の手口

セルフレジと不正3 モバイルレジ.jpg
これまで説明したものは、固定された場所にあるフルセルフレジについてのものです。
一方で最近増えつつある端末付きのカート(スマートカート)やスマートフォンのアプリを利用して商品スキャンを売場で行うタイプのものにおける不正行為は別に考える必要があります。(このタイプをモバイルレジと呼ぶことにします。)

つまりモバイルレジではスキャンをしたかしないかを売場で確認することはほぼできません。また商品をかご(カート)に入れた時点でスキャン登録をしなかったとしても、それを犯罪行為と決めつけることはできません。なぜなら最終的にレジを通過する前に商品をスキャンするのかもしれないからです。 

万引は商品を隠匿して支払いをせずに店舗を出る行為です。万引は、売場で商品をバッグやポケットに入れた時点、つまり隠匿した時点で犯罪は成立します。
しかし、現実には売場から店外に出た時点で逮捕することがほとんどです。

現時点でモバイルレジの専用レジには異なるタイプがあります。
既にモバイルレジシステムの中で精算が完了しており、人間がサンプリングチェックをするだけのもの、同様にボバイルレジシステムの中で精算が完了しており、モバイルレジ端末(スマートフォン)に精算完了のQRコードを専用レジにあるスキャナーに読ませるもの、商品のスキャン登録のみをモバイルレジで行い、最終的な精算は、専用レジ(もしくはフルセルフレジ)で行うものです。
モバイルレジにおける不正行為は、スキャン登録済みの商品の中にスキャンしなかった商品を忍ばせて、専用レジを通過しようと企図するものが大半です。


次回は、このような不正を防ぐ手立て、対策について説明します。


作成:全国万引犯罪防止機構理事
工業会日本万引防止システム協会副会長
エイジスリテイルサポート研究所
近江元


〈〈コラム「セルフレジと不正」シリーズをチェック!〉〉
第1回「セルフレジとは」
第2回 「セルフレジ不正の経営への影響」
第3回「セルフレジ不正の発生要因」
第5回「セルフレジ不正の防止策」


エイジスのマーチャンダイジングサービスバナー

関連記事

取引実績2,500社以上のエイジスが、店舗運営のお悩みを解決致します!

資料ダウンロード

資料ダウンロード

まずは、サービス資料ダウンロード

資料ダウンロード
お問い合わせ

お問い合わせ

店舗運営のお悩み、お気軽にご相談下さい

お問い合わせ
無料メルマガ登録

無料メルマガ登録

店舗運営に関するお役立ち情報などを配信!

無料メルマガ登録
BACK TO TOP