「セルフレジと不正」 第1回 セルフレジとは

セルフレジと不正①

コラム「セルフレジと不正」シリーズでは全5回にわたり、セルフレジを使用した不正の現状や対策について解説していきます。

初回の第1回では、セミセルフレジや導入の目的などセルフレジについて紹介していきます。

セルフレジとは?

セルフレジは英語では Self Check Out と呼ばれ、よく欧米の報告書や記事にはその頭文字をとって”SCO”という表現が使われることがあります。

もともとレジ(キャッシュレジスター)は、不正対策を目的として誕生しました。

発明者のジェームズ・リッティはオハイオ州デイトンで、彼の経営するバーで従業員が常連客から代金を受け取る際に彼らが正しく売上として受け取っているのか、それとも自身のポケットにいれているのかどうか、疑問に思い始めました。プロペラの回転数を追跡する蒸気船のカウンターを観察した後、彼は 1883 年に兄の助けを借りて最初のレジの特許を取得しました。

店主のジョン H.パターソンは、1884 年にリッティの特許の権利を 6,500 ドルで購入し、National Cash Register(NCR)会社を設立しました。彼のテクノロジーへの関心は、彼の最年長の小売店員の 1 人からの損失によって引き起こされました。彼は、友人に対して、通常価格よりも安い価格で商品を販売していたのです。

実はこの不正は、レジが発明され一般に使用されるようになってからも、そして今も発生しています。
それはスイートハーティング(Sweethearting)と呼ばれる内部不正です。レジ担当者が自分の家族や友人に不正に値引きして販売したり、商品そのものを登録しない(バーコードを読ませない)というものです。

他にもレジ不正の手口があり、例えば返品返金処理を悪用したもの、レジに登録せずに代金を受け取るなどです。

日本では 1953 年にスーパーマーケット紀ノ国屋が東京青山に開店し、セルフサービス方式によるレジでの精算方式を採用したことに端を発して、いまやセルフサービス方式とレジによる精算はごく普通にどこでも見られることになりました。

前置きはこのくらいにして、まずセルフレジの不正対策を述べる前にセルフレジについての基本情報から整理してみましょう。

セミセルフレジ

セミセルフレジ(日本スーパーマーケット協会では「セルフ精算レジ」)は、日本スーパーマーケット協会の 2022 年年次統計調査報告書によれば 2022 年で設置店舗があると回答したスーパーマーケット全体の 75.1%であり、今後もセミセルフレジの導入は進むものと思われます。

スーパーマーケットにとどまらず、コンビニエンスストアやドラッグストアなどでも支払いはお客が行い、従業員は現金やプリペイドカード、クレジットカードには触れないのが当たり前となってきています。
スーパーマーケットやドラッグストアなどは一般的にレジ一台に対して精算機が2台設置されており、これによりレジ精算処理をスピーティに行えるようになっている。

コンビニエンスストアでは、レジに一体化したものが使われています。導入のスピードはコロナ禍の影響もあり早まっています。

フルセルフレジ(固定式セルフレジ)

セルフ・チェックアウト・システムは元々、米国のチェックロボット社のデビッド・R・ハンブルによって発明されたもので、実際に最初に店舗で用いられたのは1986年7月にアトランタ近くにある大手スーパーマーケット・チェーンのクローガーの店舗であったといわれます。

日本スーパーマーケット協会では「セルフレジ」と呼ばれており、お客自身が商品バーコードをスキャンし、支払いもお客が行うものです。

同じ調査報告書によれば2022年で導入店舗があると回答したスーパーマーケットは全体の25.2%となっています。特に 51 店舗以上を持つ大企業に多く、その導入比率は 72.2%となっています。フルセルフレジはコンビニエンスストアでも有人(セミセルフレジ)に加えて設置しているところも増加しており、特に都心部の昼食時などの混雑緩和に貢献しています。

RFID を活用している例もあります。ユニクロ(ファーストリテイリング)の店舗ではRFID タグは製造段階で商品に付けられていることで店舗では商品に RFID ラベルタグをつける必要がありません。また、精算ボックスに商品を置くと自動的に商品に取り付けられたRFID を読み込み無効化するため、出口の防犯タグは発報(警告音を発する)しません。もしレジでの精算処理が行われない場合は、防犯ゲートで発報することになり、店舗従業員が確認する必要があります。

RFID の特徴は、それぞれに商品に異なった番号が割り振られている点です。

バーコードでは、同じ SKU(Stock Keeping Unit= 最小商品管理単位)は、同じものとして記録されますが、RFID の場合は同じ SKU であっても個々に異なった番号が割り振られているために、もし盗難などでレジを通過せずに持ち出された商品には固有の番号割り振られているために、どの店の在庫であったかを知ることができます。

売場でのバーコード・スキャン

売場を移動しながら商品のバーコードをスキャンして登録を行い、かごやカートに入れて最後に精算するという方式です。日本スーパーマーケット協会では「セルフバーコードスキャン」と分類されており、日本スーパーマーケット協会の同様の調査では 2022 年で導入しているのは 7.6%ですが、2022 年の 4.2%と比較しても導入の伸びは顕著です。スーパーマーケットの規模別では 10 店舗以下で 5%弱、26 店舗以上で 14%内外であり、規模により大きな差があります。(あくまでもアンケートに対する回答を集計したものであり、実態と差があるかもしれません)

このタイプのレジの先駆者は九州に本社のあるトライアルカンパニーで、「レジカート」と名付られた、ショッピングカートにタブレットとスキャナーが一体化したものです。すでに導入台数は1万台を優に超えており、他の企業も含めて今後も導入台数は増えていくものと思われます。

カートにこのような仕組みを組み込んだ例は、米国ではスマートカートなどと呼ばれることが多く、クローガーなど大手スーパーマーケットで実用化が進んでいます。ただし、「レジカート」が商品のバーコードをスキャナーで読み取る必要があるのに対して、米国のスマートカートの一部はAIによる物体認識を採用し、商品の外観の画像から商品を特定することでバーコード・スキャンを不要にしたものもあります。

モバイル型は、店舗が用意した端末、もしくはお客の所有するスマートフォンにアプリをダウンロードしてスマートフォンのカメラ機能を用いて商品をスキャンするものもあります。主なものは、イオンリテールのレジゴー、USMH のスキャン&ゴー、イトーヨーカドーのピピットスマホがあります。2016 年には米国のウォルマート傘下のサムズクラブ(メンバーシップホールセールクラブ)全店に導入され、ウォルマートにも導入されたが不正行為が多発したためにいったん中断しました。何度かの試行錯誤の上で現在は運用されています。名称は USMH と同じで「Scan & Go」と呼ばれます。

さらに進化するセルフレジ(チェックアウトレス)

テクノロジーの進歩はこの分野でも進み、有名なアマゾン・ゴーにはレジそのものがありません。実証実験を重ねて一般向けに店舗を開店したのは 2018 年のことです。この店舗では利用する前にはあらかじめアプリをダウンロードしてクレジットカード情報を入力しておきます。店舗入り口ではアプリで表示された QR コード(最近では手のひら認証も利用されているようです)を読み込ませて、売場で自由に商品を手に取り、そのまま店舗を出ると自動的に精算が終了し、スマートフォンに決済情報が表示されるというものです。

商品を特定する技術としては、店内に多数のカメラ、そして一部の棚に重量センサーを用い、画像で個人とその動作(商品を棚からとる、棚へ戻す)とその商品を識別するものです。AI カメラと重量センサーがこれを可能にしています。当初は多数のカメラなど重装備で非常に大きな投資が必要と思われていましたが、技術の進歩はすさまじく、低コスト化が進んでいます。

同様のシステムは他にもいくつかの事例があり、イスラエルのスタートアップ企業のトリゴは、北米だけではなくヨーロッパでも多くの導入例があります。

国内でもそれに類似したものが現れています。タッチアンドゴーと呼ばれるもので、駅構内やビル内のコンビニエンスストアで導入が始まっています。入口では特に何もする必要はありませんが、商品をとって出口前のレジに行くと購入商品がディスプレーに表示されるというものです。この時に実際の購入品と表示されたリストに不一致があれば、訂正操作をしたうえで精算をします。精算が終わるとゲートが開き店外に出られます。最終的にはレジを通過することになるためにこの場合はチェックアウトレスとは言えません。

吉田選手が在籍しているボストン・レッドソックスのホームであるフェンウェイスタジアムでは、数か所にインスタカートのケイパー・カウンターを導入しています。これは菓子や飲料をタッチレス(スキャンレス)で購入体験できるもので、このチェックアウト・システムは、画像認識と AI 技術を用いて、野球ファンにスナック菓子や飲料の購入を短非接触でスピーディに提供できるものです。

ここで「無人店舗」についても触れておきます。上記の例は日本では「無人店舗」と呼ばれることが多いのですが、欧米ではこれらの店舗をオートノマス・ストア(AutonomousStore)と呼んでいます。日本語にすると「自律型店舗」となります。広義では、セルフレジ技術そのものにも使われることがあります。厳密にいえば「無人店舗」は「無人」である時間があるというだけで、商品発注は自動化できたとしても実際には商品の補充や整理などさまざまな作業を人間が行うことになります。

国内でも「無人店舗」の取り組みは他にも広がりつつあり、2023 年 5 月には書店で深夜を無人にして営業するという実証実験もスタートしています。ただし、このシステムも含めて商品画像を用いるのではなく、一般的なセルフレジを使用しながら不正行為を抑止するための防犯カメラや、事前に顧客が個人情報を登録しておいたアプリに表示されたQRコードを出入り口にある設置型のスキャナーに読み込ませることで入退店をコントロールしようとするものです。

セルフレジ導入の目的

セルフレジの導入目的はまず第一に買物客の利便性を向上させることです。つまりレジの行列に並ぶことによるストレスを軽減することです。これを欧米ではフリクションレス(frictionless)と呼ぶことが多いのですが、同時にレジ担当の人手不足解消、人件費削減、人時生産性の向上といった経営上の課題解決にも貢献できます。日本のマスコミや業界誌などでは、後者にフォーカスして経営上の課題解決であるレジ作業の生産性とそれに伴う人件費の抑制、労働力の不足への対策として言及されることが多いのですが、最大の目的はお客の快適な買物環境を提供することです。多くのお客は口に出しては言いませんが、長い時間レジで待たされることについての不満を持ち、できる限り短時間で買い物を済ませたいのです。商品を選ぶ楽しさはあったとしても、レジに並ぶのは苦痛以外の何物でもないのですから。

繰り返しますが、セルフレジの真の目的は、人手不足対策でも人時生産性の向上ではありません。お客の買物体験をより快適にすることこそが小売業にとって最も大きな生き残り戦術なのです。ウォルマートの動画ではこう説明しています。

With fewer lines, customers are able to save time. Hosts are there to help customers.
And wide-open area allows more freedom to interact with customers and associates.
Testing ideas like the new checkout area will help us build better experience.
お客はレジに並ぶ行列をなくすことで時間を節約できる。(セルフレジの)サービス係はお客を手助けする。そして広く開かれたレジスペースは自由にお客と従業員が交流できる。新たなセルフレジエリアは、よりよい体験を作り上げることに手助けになるだろう。


次回はセルフレジにおける不正がどのように経営に影響を与えるのかについて説明します。



作成:エイジスリテイルサポート研究所 近江 元


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