「セルフレジと不正」 第5回 セルフレジ不正の防止策

セルフレジと不正①

コラム「セルフレジと不正」シリーズでは全5回にわたり、セルフレジを使用した不正の現状や対策について解説していきます。

第5回では、セルフレジ不正の防止策について紹介していきます。

セルフレジ不正の防止策

セルフレジ防止策は、大きくわけて三つです。
(1)レジエリアのデザイン
(2)従来の防犯カメラとモニター、顔や物体を識別できるAIカメラモニターなどの機器システムなどのテクノロジーを用いたもの
(3)サービスアテンダント(セルフレジサービス担当者で、以降アテンダントと呼ぶことにします。)

(1)レジエリアのデザイン

セルフレジに限らず、レジまわりのデザインは、顧客の利便性と不正防止の両方の面で重要です
セルフレジでの不正を防ぐには、レジエリアや店舗の出入口について改善が必要な場合があります。
セルフレジに限りませんがレジで発生する不正を抑止するためにお客の利便性を損なわない範囲で可能な限り出入口を少なくすることも有効ですし、入口と出口を別々に設定するという方法も効果的です。
売場とレジ周りの動線をできるだけ簡素化し、レジ精算前のお客とレジ精算後のお客の動線が交わらないようにするのも効果が期待できます。

ここに例を示します。セルフレジエリアの客動線をコントロールする、つまり入口と出口を明確にして、逆方向に行くことを妨げるようにしなくてはなりません。
同時にセルフレジと直接は関係ありませんが、使用していないレジは遮蔽物、鎖などで出入りできないようにすべきです。顧客の利便性に配慮しながら、レジエリアと売場との出入りを制限することが必要です。

セルフレジと不正5 レジエリアのデザイン1.png

当然、ここには後で説明するセルフレジ専任のアテンダントが顧客対応をするわけですが、サービスカウンターがある場合はその設置場所も検討すべきでしょう。
ポイントはお客の店舗への出入りを見ることができることです。また、方向も重要です。
できればサービスカウンターは出入り口に向かって、サービスカウンターの担当者が、顧客対応できるようにすべきでしょう。

 十分なスペースがあり、大がかりに多数のセルフレジを導入する場合は、理想的な配置ができますが、スペースが限られており、既存の店内レイアウトを大きく変更できない場合、またセルフレジの台数も少ない場合も基本的には同じ考え方です。

 次の例は、ドラッグストアの既存店舗にセルフレジを二台導入した場合です。導入費用面からもできるだけ大がかりにならないように行おうするのは当然ことです。

6台だった有人レジのうち2台をセルフレジに置き換えようというものです。現状の位置を変えずにふたつの有人レジをセルフレジに置き換えたのです。しかし図にあるように、いくつかの問題点がありました。それを解決しようと変更したのが図の下の部分です。

セルフレジと不正5 レジエリアのデザイン2.png

(2)機器システムなどのテクノロジー


① 防犯カメラとAI(人工知能)による顔認証システム

レジまわりに犯罪抑止のためにカメラを取り付けることは当たり前のこととなっています。併せて撮影された画像をリアルタイムでお客が見えるように、大型のモニターディスプレイを高い位置(天井や柱)に固定する、またセルフレジ一台一台に小型のモニターをつけて、買物客自身商品登録のためのスキャンをしている手もとなどをお客本人に見えるようにするなどがあります。

売場に設置された防犯カメラと同様に、「防犯カメラで撮影している」ことを知らしめ、不正行為を抑止するために売場と同様にセルフレジ周辺に注意喚起を目的とした掲示をすることもよいでしょう。

顔認証カメラ(顔画像識別機能付きカメラ)は、店内での万引行為の防止に導入される事例が最近増えてきています。これはセルフレジにおける不正行為の防止にも有効です。
セルフレジを利用するお客は繰り返しセルフレジを利用する傾向が強く、不正行為をする人間も繰り返し利用します。その結果検挙に至った例も多くあります。

更に新たな技術として不正行為の動作をAIカメラで検知するシステムがいくつか開発されています。


②セルフレジなどでの不正類似行為の検知

セルフレジでは買物客が購入する商品を自らスキャンします。ともかく恣意的か偶然かは別としてスキャンもれが起こり得ます。
そこで不正対策としてスキャンもれそのものを検知できるような新たなソリューションが開発されています。

具体的には人を識別するのが目的ではなく、商品そのものの画像に着目してスキャンもれを発見しようというものです。その例としては(バーコードを読む)固定されたバーコードリーダーの前を商品が通過した画像情報とスキャン登録された情報が同時に生じているかを判断するものです。
何も持たずにバーコードリーダーの前に手のひらを置いても手に商品を持っていないと判断するために商品のスキャンもれと判断しません。手に商品を持っていることをAIが判断することで商品のスキャンもれとそうではないものとを識別するのです。

他の例では、まず商品と商品を持つ手の画像をカメラが認識します。これもバーコードリーダーの前もしくは上を商品が通過する際にスキャンもれを検知しますが、同時に商品の形状を学習しており、スキャン登録された商品の情報とカメラ画像で得られた商品の大きさや形状が大きく異なると判断した場合に知らせるものです。

とくに不正の巧妙な手口のひとつであるバーコード偽装(product switch)には効果があります。


③商品画像認識とレシート情報を利用したシステム

スマートカートなど売場で商品をスキャン登録して、かごやカートに入れるといったしくみも日本でも増えてきました。
不正防止のために従業員が数品をスキャンチェックするという方法をとる店舗もあります。

しかし、これをできるだけ自動化するためのシステムが存在します。ゲートを通過する際にレシートを読ませるとゲートが開くというしくみです。
ただし、ゲートを通過する際に複数のカメラで撮影した商品画像とレシートに示された商品情報が不一致の場合、つまりレシートにない商品がカートにあるという場合、ゲートが閉まるというものです。

ただしおわかりのように条件があります。
ショッピングカートに商品をマイバッグなどに入れ外から見えない場合は、このシステムは機能しませんし、カートの中の商品の全部を確認することはできません。つまり商品をカートに直接入れたままの状態で、外から商品が見える状態でなくてはなりません
ですから日本とアメリカとの買物習慣の違いがあるため、日本で利用されることはないかもしれません。

しかし、セルフレジ不正対策として商品画像情報を利用するというソリューションの可能性は今後ますます高まるでしょう。


(3)アテンダント

サービス係(呼び名はさまざまですがここではアテンダントとします)は、複数のセルフレジの間を移動して顧客の様子を注意する(あくまでもセルフレジの操作や支払い手続きで困っている顧客を助けるという姿勢で)ことが有効です。
後述する表情観察も重要です。これも不正を疑うことよりも顧客が「困惑の表情がある」、「こちらを見る」などした顧客への対応が不正の防止につながります。
特にこちらに気づかれないようにちらちらと様子を伺うようであれば、必ず、顧客に近づき「何かお困りのことはありますか。」など声をかけます。

不審な動作や表情などを発見した場合、不審者への対応(抑止)が必要になります。
基本的にはEAS(防犯ゲート)が発報(警告音が鳴る)したと同様に最初から不正の疑いをかけるような行動はつつしむべきです。
お客自身がバーコードをスキャンするのですから、スキャンしないとしても恣意的なものなのかそうではないのかは厳密に識別することは大変困難です。もし明らかに不正が発覚した場合も必ずしも捕捉すべきではなく、抵抗した場合も自らの危険を冒してでも肉体的な接触を伴う行動は避けるべきです。

なんらかの違和感が感じられた顧客の購買データや防犯カメラで画像を確認することで不正発見に繋がることがあります。

不正が疑われるなんらかの違和感のある顧客を発見した場合は、その顧客の特徴を記録して情報共有するのも一つの方法です。
例えば、年齢性別、購入点数や購入したもの、服装を含む身体的特徴、来店日時、曜日(同じ時間帯に来店することが多い顧客もいる)などです。記録しやすいように書式(スマートフォンなら入力フォーム)を用意しておくのもよいでしょう。

忘れてならないのはアテンダントが最優先で行うべきことは顧客がスムーズに短時間で精算できるように支援することです。その上で顧客の行動や表情に注意を払うことで同時に不正の抑止につながるのです。

またアテンダントは、不正を見つけることを強いられると緊張しストレスを強く感じることもあります。したがってマネジャーは、不正発見に重きを置くのではなく、あくまでも顧客サービスを優先する中で不審な者を発見した場合は、定められた手順で対応するように指導すべきです。また対応の仕方について十分な理解と行動するための教育訓練が必要であり、アテンダントが自信をもって役割を果たせるようにしなくてはなりません。

 

==【参考】万引犯、セルフレジでの不正行為を行う者の表情研究==

 

万引被疑者に表れる「微表情

万引を行おうとする、もしくは行った後には犯行を悟られたくない、捕まりたくないという恐怖心から「恐怖の微表情」というものが現れることがあります。「微表情」とは抑制された「真の感情」がフラッシュのように一瞬表れては消え去る微細な表情のことで、多くは0.2~0.5秒以内の出来事で通常の会話では80~90%が見落とされる表情です。

「恐怖表情」の特徴は、「かぎ型眉」と「上まぶたが引き上げられる」動き「下まぶたに力が込められる」動きです。

  • 「かぎ型まゆ」:両方の眉が引き上げられ、両方の眉が中央に寄りながら引き下げられ、額に波状のしわができる
  • 「上まぶたが引き上げられる」:この動きにより、眼球が大きく露出する
  • 「下まぶたに力がこめられる」:この動きによって、下瞼の下にしわが深く刻まれる
  • 「唇が水平に引かれる」:この動きによって、口が開き気味になる
[セルフレジでの不正の場合の表情の特徴]

〈図表3ー16G〉恐怖表情
セルフレジと不正5 不正の場合の表情の特徴.png

セルフレジの場合、至近距離でアテンダントの従業員に見られているかもしれない中で不正行為を行うので、そのプレッシャーから「恐怖表情」が表れる可能性が高いのです。その視線の先にはアテンダントがいますから、この微表情に気が付くことができたなら、近づいて声をかけるなどすることによって未然に不正行為を抑止することができます。
ただし視線を向ける時間はほんの一瞬です。セルフレジを利用するお客の動作と合わせて表情にも注意することが大切です。

(全国万引犯罪防止機構発行のロス対策テキストより転載)



作成:全国万引犯罪防止機構理事
工業会日本万引防止システム協会副会長
エイジスリテイルサポート研究所
近江元



〈〈コラム「セルフレジと不正」シリーズをチェック!〉〉

第1回「セルフレジとは」
第2回 「セルフレジ不正の経営への影響」
第3回「セルフレジ不正の発生要因」
第4回「セルフレジ不正の手口」 


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