「継承」令和4年台風15号を語る 災害から得た教訓―静岡市危機管理課 職員様のお話

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豪雨災害を経験した静岡市、当時の教訓を残すために始まった株式会社エイジスの取り組み「継承」今回は静岡県静岡市 危機管理課の職員様のお二人にインタビューをさせていただきました。
日頃何を備えておくべきなのか、今の体制で十分なのか、全自治体の皆さんへナレッジを共有し、災害時の教訓としていただければ幸いです。

台風15号について

・台風第15号は2022年9239時に室戸岬の南約300キロで発生後、北東進し、近畿地方や東海地方に接近した後、249時に東海道沖で温帯低気圧に変わりました。

・台風周辺の発達した雨雲により東日本の太平洋側を中心に大雨となり、静岡県や愛知県では、23日夕方から24日明け方にかけて線状降水帯が発生し記録的な大雨となりました。

・特に静岡県では猛烈な雨が降り続き、記録的短時間大雨情報を多数発表しました。また、複数の地点で24時間雨量が400ミリを超えて平年の91か月分の雨量を上回り、観測史上1位を更新しました。

※内閣府 防災情報のページ 令和4年台風第15号による被害状況等について(令和411213:00)より引用

台風15号による被害について

この大雨により、死者3名、9,000棟以上が浸水、最大約120,000軒が停電しました。
また、静岡市清水区では最大63,000軒が断水し、復旧に約2週間かかりました。

 

静岡市役所インタビュー

静岡市危機管理課 職員様へお話をお伺いしました。

―近年、貴市が体験された災害についてお聞かせください

「令和49月に発生した台風15号では線状降水帯が複数発生し、夜間短期間で雨が集中的に降りました。静岡市内に流れる巴川やその他市街の浸水地域で内水氾濫が起きたため、多くの住宅被害や車の水没、山間地における土砂災害など、多岐にわたる被害が発生しました。」

―避難所は何箇所開設されましたか?どれほどの期間、運営されましたか?

「静岡市内では風水被害が発生した際に開設する避難所が79箇所あります。台風15号の際も夜間79箇所を開設し、翌日の昼まで開設しました。開設期間自体は1日も満たず短かったのですが、避難者の方も多く避難されてきて、受け入れや物資の配布など、様々な業務が発生しました。」

 

―何名ぐらいの方が実際に避難されましたか?

「避難所によって違いますが、数人のところもあれば、十数人のところもありました。何百人といった大きな単位ではありませんでしたが、直近静岡市で経験した避難所の開設では多かったです。」

 

―避難所の開設、運営はどなたがされていましたか?

「静岡市では、初期の立ち上げは市の職員が行います。その後、本格的に被災されご自宅に戻れない方々に対して、避難所を運営していくのですが、その際は自治会の方が主体となり、市の職員も協力して運営していきます。」

 

―避難所1箇所あたり、市職員の方は何名対応されていたのでしょうか?

「静岡市では各自治会の学区や地区という単位で、市の職員が5名~10名割当られています。避難所を開設するにあたり、23名の職員がまず立ち上げを行い、その後交代で運営していきます。」

 

―実際に運営をされて、見えてきた課題は何でしょうか?

「避難所の開設状況やリアルタイムで何名避難されているかなどを、災害対策本部の庁舎にいる市職員と現場にいる職員間でのリアルタイムな情報共有が難しく、課題に感じました。避難所を翌日のお昼頃に閉鎖・解散してしまったため、その後の地域の被害状況や、自治会の方からの「今どういう状況か」など、そういった声を直接聞く機会もなくなってしまい、避難所の早期閉鎖はその後の復旧状況調査に課題が残りました。」

 

―災害時にコミュニケーションが難しくなる、その要因はなんでしょうか?

「避難所開設の報告や閉鎖する際の状況については、システムを通じて市の本部と共有することになっています。しかし、操作の徹底や、避難所ごと状況に応じて刻々変化していく中で、電話で要請してくるところもあれば、システムを通じて要請してくるところもあり、混乱が生じました。」

 

―トイレや水の確保といった課題はありましたか?

「清水区で断水が発生し携帯トイレを住民へ配布しましたが、課題は多かったと思います。静岡市内の避難所に仮設トイレや大きな倉庫に携帯型トイレを備蓄しているのですが、実際配布することは近年なかったため、携帯トイレの使用方法、仮設トイレの操作や組み立てる職員の習熟度、設置方法、汲み取り方法など実際にやってみて見えてくる課題が多岐にわたりました。特に仮設トイレ(貯留式)のし尿処理の手配や回収方法など、後工程まではスムーズな立ち上げができていなかったので、時間がかかってしまい苦労しました。」

 

―今後トイレを備蓄していく上で、組み立て式と簡易携帯トイレはどちらが有効でしょうか?

「少ないスペースで多くの物資を備蓄できるという面でいうと、携帯トイレが優れていると思います。ただ、普段使わないものですので使用方法がわからない、ご高齢の方や手足が不自由な方にとっては使いづらい、という問題あります。仮設型のトイレであれば普段に近い環境になるので使いやすいと思います。コスト、スペース、利便性、色々な面でメリット・デメリットがありますので、対象者の方のことも考えてバランス良く備蓄していくことが重要だと感じています。」

 

―トイレカーの検討について

「能登地震でトイレ問題が大きな話題にもなり、他の自治体で実際トイレカーを派遣されていて、被災者の方にとっては普段と同じ環境、なおかつ奇麗なトイレを使用できるということで、静岡市でも今年度導入するために準備を進めています。

 

―水の確保について

「静岡市の上下水道局や全国の自治体の方から応援を頂いて、メインは給水車で配布しました。給水所の整理や、各家庭の給水袋の備蓄率がまだ低いため水を持ち帰る手段も問題となりました。給水所に来ることができない高齢者や要配慮施設の方に対して水のペットボトルの配布も行いましたが、配送計画や住民の方が持ち帰る際の重さの問題も発生するなど、色々な点で大変だったと考えています。」

 

―被災者への備蓄品配布における課題

「物品に関しては市の防災計画に、どこに・何が・どれくらい置いてあるかが計画記載されており、市職員全員が知っています。しかし、防災倉庫内には色々な物が色々な場所に置かれているため、すぐに必要な物を必要な数を持っていくことは主担当でないと難しいという課題があります。担当者ではなくても、備蓄品をすぐに取り出して運搬できる倉庫の維持管理や、ロケーション図の作成はとても重要だと感じました。配布に関しても、毎年トラック協会と協定を結び輸送を依頼していたのですが、今回実際に配布が必要となり、どういう調整をすればよいのか?どれくらいの量を積むことができるのか?など、コロナ禍で訓練もできなかったこともあり、輸送する際の細かな情報がわからないという問題も浮き彫りとなりました。物を配る、と言えば簡単なのですが、物流の世界の話になるので、一自治体の職員が完璧にこなすのはかなりハードルが高いと実感しました。災害時に物流関係者、倉庫関係者と密に連携をとってお互いの得意不得意なところを補い、連携して災害対応にあたっていくべきだと思います。」

 

―災害時の物流について、抑えるべきポイントは?

「まず、倉庫に何があるのか、どういう資機材で搬入・搬出できるのかを抑えるべきだと思います。それによって、トラックの大きさも異なりますし、フォークリフトが使えるのか、ハンドフォークなのか、人海戦術でバケツリレーなのか、それが決まっているかどうかで最初の計画が決まりますので、重要な要素だと思います。」

 

―災害時の経験を継承するため、伝えたいこと

「備蓄品を買って、倉庫で管理して、実際に避難所へ配るという一連の流れは訓練等でイメージできると思いますが、実災害では多岐にわたる依頼が多くなり、訓練の想定とは違う動きや役割が次々と生まれてくると思います。実際に発災してそれを経験するというのは不可能ですので、やはり訓練の中で色々な物流業界、倉庫業界など色々な方からアドバイスをいただいて訓練をやればもっと実践的なスキルが上がるのではないかと思います。」

「何でも自前でやろうとしすぎるとどこかでパンクしてしまうと思います。行政がパンクしてしまうと市民に対するサービスが滞るだとか、必要な物が行き渡らないなど、市民の皆さんの暮らしや被災後の生活に影響を及ぼすことになります。行政がやるべきことをやるのは勿論重要ですが、周りの協定を結んでいる会社や他の機関の方々と連携することで、より早期の復旧に繋がると思います。」

【参考①】防災備蓄品管理にお困りの方へ

エイジスでは、棚卸で培ったノウハウを活かし、自治体や企業様の「防災力」向上のお手伝いをします。

ご利用いただいた自治体様からは「備蓄品の管理が大変だったが、整理して頂いたおかげで負担が減った」「管理が良くなった倉庫を見た住民の不安解消にもつながった」と好評頂いているサービスです。


▼防災備蓄品管理サービスの基本的な内容はこちら

  1. 棚卸 
  2. 倉庫内の整理整頓と簡易清掃 
  3. 備蓄品の賞味期限チェック 
  4. 可動型機材の動作確認 
  5. 倉庫の図面作成・撮影 
  6. 避難所周辺の現状確認




【参考②】「自治体DXガイド」に弊社サービスに関する記事が掲載されました!

備蓄品管理の効率化で自治体の防災力向上を支援する取り組みをご紹介していただきました。

記事内ではサービスの詳細や導入自治体からの反響をご紹介しています。ぜひご覧ください!

 

インタビュー動画ダイジェスト版


今回掲載されている静岡市役所インタビューのダイジェスト版動画はこちらからご覧いただけます。
コラムと合わせてぜひご覧ください。



ご不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。

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