時代遅れの備蓄品とは?

防災備蓄倉庫の扉を開けると、そこには何十年も前に購入された備蓄品がひっそりと眠っています。
「いざという時のために」と用意されたはずのそれらは、本当に役立つのでしょうか?
本コラムでは、全国の備蓄倉庫を調査してきたエイジスの視点から、現代の防災に本当に必要な備蓄品のありかたを探ります。
1.備蓄品の現状把握 どんな物がどんな状態であるの?
以前「すぐに使える備蓄倉庫」という内容のコラムを書きましたが、すぐに使える備蓄品とは、そもそもどんな備蓄品がどんな状態で保管されているのでしょうか?
公助の場合、備蓄品は各自治体の想定避難者数×3日分が標準とされています。しかし、その備蓄品の種類は各自治体で様々で、想定災害種類や地域特性によって大きく異なります。
問題は、大きくの自治体や団体が倉庫に納入した時点で満足してしまうことです。購入時に保管管理まで想定されていることは稀で、備蓄が拡大した昭和最後期には、そうした視点はほとんどありませんでした。
そして一度納入した備蓄品は使えなくなったからといって簡単に捨てられません。これが現状です。
ご自分の自治体にどんな物がいくつどのような状態で保管されているのか、ご存じでしょうか?
2.備蓄品が役に立たなくなる意外な理由
備蓄品は当然、入れっぱなしだと使えなくなります。その理由は主に「期限切れになる」、資機材であれば「壊れて動かなくなる」ということが挙げられますが、盲点なのが「使う習性のない時代遅れな物品」であることや「期限が無い物品」であることです。
代表例は「和式便所」です。能登半島地震で備蓄トイレの必要性重要性は再認識されましたが、今の時代に和式便器を使用できる人はそう多くありません。小学校でも減ってきています。それなのに必ずと言ってもいい程、組立式の和式便所が備蓄されています。そして、組立式和式便所は「重く」「大きい」(スペースをとる)のです。
このように、期限がある物や可動点検が入る物は定期的に入れ替えられることに対して、期限が無く備蓄されっ放しにされている物は時代に取り残されて使えなくなることが多いのです。
3.時代遅れの備蓄品
何千もの倉庫を棚卸と備蓄品管理を行ってきた経験から、エイジスが気づいた時代遅れな備蓄品実例をご紹介します。
①和式便所
先述した通り、使用者への負担と保管コストの両面で問題があります。
②ろうそく
火災のリスクを考えると、避難所での使用は現実的ではありません。
③ゴザ
避難所生活の質を考えると、見直しが必要でしょう。
④固形石鹼
災害時には断水も想定され、水が貴重な資源となります。手指の清潔には除菌ジェル等代用が現実的です。
⑤缶切り
缶入りの保存食は減少し、最近の缶はプルトップがほとんどです。
⑥単体の大きな釜やザル
大規模な炊出しを行う場合でも、現在は大型の調理機セットが主流です。単体の調理器具は効率が悪く実用的ではありません。
⑦20年以上経過した紙製品や肌着
長期間保管された紙製品は劣化し、肌着類は衛生面で問題があります。
⑧リパックされていない毛布
毛布は10年でのリパックが目安とされています。25年、30年リパックされていない毛布を安心して使えるでしょうか。
4.欠かせない備蓄品
①蓄電池電力に依存した現代社会では、停電対策は必須です。発電機とセットで、安定した電力供給システムの構築が必要不可欠です。
②LED投光器(ランタン)
明かりは絶対に必要な要素です。消費電力が少なく、長時間使用でき、明るいLED照明が現代の避難所には求められます。
③トイレパック(簡易トイレ処理セット)
通常のトイレに袋をかけて使用できるため、大掛かりな仮設トイレを組み立てる前から即座に利用できます。
5.備蓄品見直しのステップ
まずは、備蓄倉庫の現状把握から始めましょう。そこで「備蓄遺物」が発見されるかもしれません。
備蓄するなら、使う物を使える状態で保管することが基本原則です。
定期的な棚卸、時代に合わない物品の整理、現代のニーズに合った備蓄品への入れ替え。
これらを計画的に進めることで、本当に役立つ備蓄品体制を構築できます。
備蓄品の見直しは専門的な知識と経験が必要な作業です。
現状調査から始まり、適切な処分方法、効果的な入れ替え計画まで、総合的なアプローチが求められます。
エイジスでは、防災倉庫の様々な調査、確認、提案を行っています。
また、備蓄品譲渡や破棄方法、入替え物品についても新たなご提案ができるかもしれません。
どうぞ、お気軽にお問い合わせくださいませ。
作成:株式会社エイジス