小売業の生産性を向上させるポイントとは?現状から対策方法まで解説します

小売業の生産性を向上させるポイントとは?現状から対策方法まで解説します

小売業界では、EC化や少子高齢化による人手不足の深刻化など、ビジネス環境が大きく変化しています。
この状況で持続的な成長を実現するには、「生産性の向上」が不可欠な経営課題となっています。

しかし、「具体的にどこから手をつけて良いかわからない」「他社の成功事例を知りたい」といった課題を抱えている担当者様も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、「小売業の生産性向上」に焦点を当て、日本の小売業が直面する現状や生産性が低い原因を深掘りしつつ、具体的な対策方法をご紹介いたします。

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小売業における生産性の現状

小売業界では、長引く人手不足や消費者ニーズの多様化、ECの台頭といった構造的な変化に直面しており、経営の効率化、すなわち生産性の向上が最重要課題となっています。

他業種と比較して伸び悩む労働生産性

中小企業庁のデータによれば、日本の小売業の労働生産性は、残念ながら製造業や宿泊業と比較して、伸び悩んでいるのが現状です。
この原因は、小売業が顧客への「おもてなし」や「サービス」を重視する特性、あるいは「人の手」を介する業務が多い労働集約型のビジネスモデルであることだと考えられます。

この伸び悩みを解消し、国際的な競争力を高めるためにも、生産性向上の取り組みは避けて通れません。

「中小小売業・サービス業の生産性分析」中小企業庁

小売業で特に深刻化する「現業職」の人手不足

小売業の生産性向上が急務である最大の背景は、深刻な人手不足です。

「令和6年版厚生労働白書」によれば、小売・サービス分野における人手不足の事業所は半数以上だといいます。

特に、店舗で実際に業務を行う「現業職」(販売員、レジ担当、品出し、検品など、管理職や事務職以外の職種)において、その傾向は深刻化しているといえます。
少子高齢化に伴い労働力人口が減少する中で、限られた人員で店舗を運営していくためには、一人ひとりの従業員がより高い付加価値を生み出す必要があります。

つまり、これまでの「人が時間をかけて対応する」ことが前提の業務フローを見直し、いかに「人の手が必要ない」状態を作り出せるかが、今後の小売業の持続可能性を左右します。

小売業の生産性が低い5つの原因

なぜ、日本の小売業は他業種に比べて生産性が低い水準にあるのでしょうか。

主な原因として、以下の5点が挙げられます。

労働集約型のビジネスモデル

小売業の多くは、依然として「人」による労働力を中心とする労働集約型のビジネスモデルです。
商品の陳列、接客、レジ打ち、バックヤードでの在庫管理、棚卸など、業務の大半が人の手を介して行われます。

製造業のように大規模な設備投資や自動化を導入しなくても実施できる業務が多く、売上を増やすためには、より多くの人員や労働時間を投入する必要が生じます。
この構造自体が、生産性向上を阻む大きな要因となっています。

個人別の生産性がはかりにくい

店舗での業務は、製造業のように「1時間に何個製品を作ったか」という明確な指標が立てにくいのが特徴です。接客時間は顧客によって異なり、品出しも混雑状況に左右されます。 

このように個人ごとの貢献度や作業の実績や効率を数値化して評価する仕組みが不十分であるため、ボトルネックの特定や適切な人員配置が困難になっています。

マルチで業務対応する必要がある

小売店の従業員は、商品知識の習得から陳列、在庫管理、クレーム対応まで、多岐にわたる業務を兼任(マルチタスク)する必要があります 。
特定の業務に集中できる時間が短く、頻繁に作業が中断されるため、個々の作業効率が低下します。

特に、急な顧客対応やレジ応援などが、計画的な売場作りの作業(棚割変更など)を常に阻害する要因となります。

原材料の高騰

近年の原材料の高騰は、特に食品スーパーやドラッグストアのプライベートブランド(PB)商品などを持つ小売企業にとって、収益を圧迫する要因となっています。
これに加え、人手不足の深刻化に伴う人件費の上昇は、店舗運営の観点から見ると、「人材」も店舗経費にとって「原材料」の一つとみなせます。

これらのコスト増を価格に転嫁しきれない場合、利益率が圧迫され、売上高人件費率が悪化するため、生産性向上が経営の必須条件となっています。

デジタル化・省力化投資の遅れ

他業種、特に製造業や金融業と比較して、小売業界はデジタル化(DX)や省力化投資の遅れが指摘されています。
依然として、紙ベースでの情報共有、電話やFAXによる受発注、店舗ごとのローカルな管理手法、そして担当者個人のスキルに頼る「属人化」した業務が残っているケースが多く見受けられます。

初期コストや既存システムとの連携の煩雑さから、ITシステム導入への投資が躊躇されていることも、この遅れを生む一因となっています。

生産性向上に取り組むことで得られる効果

生産性向上を実現すれば、企業経営に次のようなプラス効果をもたらします。

賃上げ原資の確保と収益性の改善

生産性が向上すれば、少ないリソース(労働力や時間)でより多くの付加価値を生み出すことができるため、利益率の改善に直結します。
収益率が改善されれば、従業員の賃上げ原資に充てることが可能となり、優秀な人材の定着や新たな採用にも有利に働きます。

特に、人手不足が深刻な中で、従業員の待遇改善は極めて重要な経営戦略といえます。

従業員満足度(ES)と顧客満足度(CS)の向上

非効率な業務や長時間労働が是正されることで、従業員の負担が軽減され、従業員満足度(ES)が向上します。

ESが向上すると、従業員はより意欲的に業務に取り組むようになり、結果として顧客へのサービス品質が向上し、顧客満足度(CS)の向上にもつながります。

小売業の生産性を向上させる4つのポイント

小売業が生産性を向上させるために、具体的に取り組むべき4つの重要なポイントをご紹介します。

デジタル技術(DX)の活用による業務効率化

最も効果的な対策の一つは、デジタル技術(DX)の活用です。
たとえば、「RPA/AI」「IoT・カメラ」の活用が考えられます。

RPA/AIの導入・活用

定型的な事務作業(データ入力、報告書作成、簡単なメール対応など)や、需要予測、最適な在庫配分といった高度な判断業務にAIを活用することで、商品部の業務負荷を大幅に軽減できます。

IoT・カメラの導入・活用

店舗内での人の動きや陳列状況、レジの混雑状況などをIoTセンサーやカメラでリアルタイムに把握し、最適な人員配置や品出しタイミングを自動で指示することで、人時生産性を高められます。

業務プロセスの標準化とマニュアル化

業務の標準化によって属人化を解消し、誰でも一定品質で業務を遂行できるようにすることができます。

次の2ステップで実現可能です。

1.個人別、作業別生産性の計測、稼働計画と実績の検証

標準化の第一歩は、現状の業務を客観的に把握し、評価することです。

まず、従業員一人ひとりの作業時間や、作業ごとの生産性(例:1時間あたりの品出し量)を正確に計測し、ムダや非効率なプロセスを可視化しましょう。

2.手順の明確化

商品の陳列ルール、棚卸の手順、販促物設置の方法など、全店舗・全従業員が守るべきプロセスを明確化します。

3.マニュアルの整備

標準化したプロセスを、動画や画像を活用したわかりやすいデジタルマニュアルとして整備し、全従業員が簡単にアクセス・参照できる環境を整えます。

「コア業務」と「ノンコア業務」の切り分けと外部化

従業員が、より付加価値の高いコア業務(売上向上に直結する接客、販促企画など)に集中できるように、それ以外の定型的ノンコア業務(棚卸、品出し、棚替え、清掃、データ入力など)は思い切って外部化(アウトソーシング)を検討します。

特に、低頻度で発生する棚替えや棚卸、改装業務、あるいは入荷量に波があり、毎日の必要人時が大きく変動する品出し業務は、時給制の従業員のみで対応しようとすると、人員のスキルやモチベーションによって作業品質やスピードにムラ(バラツキ)が発生しやすいという課題があります。

こうした変動業務や専門性の高いノンコア業務を、外部の専門業者に委託することで、自社の従業員が接客や顧客分析といったコア業務に専念できるようになり、トータルでの生産性と収益性の向上が見込めます。

作業量をはかる仕組みを導入する

「何となく生産性が低い」と曖昧にしか把握できていない状態から脱却するためには、作業量を数値で把握し、生産性を可視化する仕組みが不可欠です。

各工程にどれだけの時間がかかっているのかを、作業分析ツールなどを用いてデータ化しましょう。

具体的な作業時間を算出することで、「この棚出し作業には本来◯分かかる」という標準時間を設定でき、それに基づいた根拠のある数値目標や適正な人員配置が可能になります。

小売業で業務効率化を進める手順

ここで、小売業で業務効率化を進めるための4つのステップをご紹介します。

課題を見つける

まずは、現場のどこに無駄が潜んでいるのかを正確に把握することから始めましょう。

この時、店長やスタッフへのヒアリングだけでなく、POSデータや作業動線の分析、棚卸し精度の確認など、定量的なデータを用いてボトルネックを特定してください。

たとえば、「品出し作業に想定以上の時間がかかっている」「特定の時間帯だけレジ待ちが発生している」といった具体的な課題を抽出することで、効果的な対策を立てることができるようになります。

さらに、目標(KPI)を設定します。この時、「1時間あたりの品出し個数」や「1ケースあたりの仕分け時間」など、純粋な「作業効率」を測定する指標を設けます。
売場がピーク時間に「あるべき姿」から逆算して、数値目標を設定することが重要です。また目標値は常に測定結果を元に上方修正し続けていくことが、生産性向上の秘訣です。

詳しくは「売上に左右されない「作業量KPI」の導入」でお伝えします。

プロセスを策定する

課題が明確になったら、それを解決するための新しい業務プロセスを設計します。

たとえば、デジタルツールの導入が必要か、あるいはマニュアルの改訂で対応できるのかを検討し、具体的な実施ルールを定めます。

この時、現場の負担が急増しないよう、一部の旗艦店でテスト導入を行い、実効性を検証しながら詳細な運用フローを固めていくことが、全社展開を成功させるポイントです。

実践する

策定したプロセスを全店、あるいは対象部署で実行に移しましょう。

新しい取り組みを現場に浸透させるには、なぜその変更が必要なのか、それによって現場にどのようなメリット(残業削減や接客時間の確保など)があるのかを丁寧に説明し、理解を得ることが不可欠です。

本部の商品部と店舗で連携し、教育トレーニングや動画マニュアルの活用を通じて、新しいオペレーションの徹底を図りましょう。

効果測定と改善を繰り返す

施策の導入後は、あらかじめ設定しておいたKPI(作業時間、人時、個数、件数、歩行距離、ロス額、在庫回転率、人時売上高、人時粗利額、坪売、坪粗、客数、客単価、購買率、PI値など)に基づき、定期的な効果測定を行います。

計画通りの成果が出ていない場合は、運用の不備なのか、あるいはプロセス自体に無理があるのかを分析し、即座に修正を加えましょう。

この「PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクル」を高速で回し続けることで、時代の変化に強い、高効率な店舗運営体制を構築できます。

小売業で業務効率化を進める際の注意点

業務効率化の取り組みを形骸化させず、実効性のあるものにするためには、評価指標の持ち方や現場への配慮が欠かせません。

ここでは、特に、大手小売企業が陥りやすい罠を回避するための4つの注意点をご紹介します。

売上に左右されない「作業量KPI」の導入

一般的に小売業では「人時売上高」や「坪売上」「PI値」「客数×客単価」などを重視しますが、これらは同じ作業を、同じ手順で、同じ時間、行ったとしても、客数・天候・立地・販促・価格といった外部要因に大きく左右されます。

このため、

  • 作業そのものの良し悪しを評価できない
  • 改善しても改善効果が見えない

という問題を内包しています。

生産性を正しく評価するには、売上の変動に影響されない「作業量KPI」を導入することが重要です。
たとえば、「1時間あたりの品出し個数」や「1ケースあたりの仕分け時間」など、純粋な「作業効率」を測定する指標を設けることで、現場の努力を正当に評価できるようになります。

「作業定義」の標準化

生産性向上のための施策を全社展開する際、店舗ごとに「作業の定義」が異なってしまうとデータの比較ができません。

たとえば、「品出し」という業務に「段ボールの解体」を含むのか、あるいは「棚割りの変更」まで含むのかを明確に定義し、標準化する必要があります。

全店で共通の定義を用いることで、初めて「どの店舗のどの工程に課題があるのか」を正しく把握し、横展開可能な改善策を打つことが可能になります。

「計測が負担にならない仕組み」の提供

生産性を高めるためのデータ収集が、かえって現場の負担になってしまっては本末転倒です。

スタッフが手書きで作業時間を記録するようなアナログな手法は避け、タブレット端末での歩数計連動や入力履歴記録、ビーコン、AIカメラなどを活用した自動計測など、現場が「意識せずに計測できる」仕組みを提供することが定着の鍵となります。

IT/SaaSツールを効果的に活用し、計測コストを最小限に抑える工夫が必要です。

「売上KPIを否定しない」二階建て構造

生産性向上を追求するあまり、「売上への貢献」を軽視すると現場の反発を招きます。

重要なのは、既存の「売上KPI」と、新しい「生産性(作業)KPI」を共存させる「二階建て構造」で管理することです。

効率化によって生み出された時間を、接客や魅力的な売り場作りといった売上に直結する業務に充てるというストーリーを明確にすることで、本部と現場が同じ方向を向いて改善に取り組めるようになります。

店舗運営の最適化に!エイジスグループのマーチャンダイジングサービス

小売業の生産性向上、特に店舗運営の最適化において、棚卸・棚替え・改装・新店応援など、低頻度で発生する売場づくり作業の効率化や、毎日作業量が変動する品出し作業の効率化は、どの店舗でも抱える課題です。

これらのノンコア業務を外注化することで、店舗従業員の負担を削減し、コア業務へ集中できるようになります。

エイジスグループは、棚卸専門企業のリーディングカンパニーとして、在庫の正確性を高める、次のようなサービスを通じて、小売業の生産性向上を支援しています。

  • 集中補充(商品補充・品出し)店舗スタッフに代わり、商品の補充・品出しを行います。開店前に商品補充を完了させるため、ストアコンディションが改善します。
  • 季節の棚替え・カテゴリーリセット定期的に必要になる棚替えを代行します。新商品の陳列・入れ替え、棚・什器の組み換えなど、棚替えを短期間で実施することができます。
  • 新店準備・改装リモデル・閉店作業什器の施工、商品陳列、商品撤去など、多大なリソースを必要とする作業を全て請け負います。手間とコストを減らし、売上ロス減少や業務効率化ができます。
  • 売場の欠品・売価チェック欠品商品のデータを収集し、分析レポートを作成します。集中補充サービスと合わせることで、適正在庫数や適正陳列数の見直しができます。
  • 賞味期限チェック…ITと人的リソースを組み合わせた賞味期限チェックサービスです。期限管理をシステム化し、正価での販売期間を延長、値引き・廃棄ロスを最小化します。

エイジスグループのマーチャンダイジングサービスに関する詳細は、こちらをご覧ください。
https://service.ajis.jp/service/merchandising.html

まとめ

日本の小売業界において、少子高齢化に伴う労働力不足やコスト高騰といった課題は、避けて通ることのできない深刻な問題です。

ドラッグストアやスーパーマーケット、ホームセンターなどの大手企業が持続的な成長を遂げるためには、従来の労働集約的なモデルから脱却し、「生産性の向上」を経営の根幹に据える必要があります。

生産性向上の第一歩として、まずは現状の業務プロセスを見直し、外部化できる業務、デジタル化できる業務を切り分けることから始めてみませんか。


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編集者

株式会社エイジス

株式会社エイジスは、国内棚卸サービスのリーディングカンパニーとして、全国83拠点を展開。3,000社を超える企業との取引実績を誇り、確かな信頼関係を基盤に、店舗運営や店舗販促活動を多面的に支援しています。

さらに、アジアを中心に海外にも営業拠点を広げ、グローバルな小売業支援にも取り組んでいます。米国では、アジア各国の小売業ニーズに応えるためのサービス開発や研究にも力を入れており、 国内外で蓄積したノウハウを活かして、流通業界の課題解決に貢献しています。

AJIS

監修者

エイジスリテイルサポート研究所 所長 三浦美浩

1987年に東北大学卒業後、損害保険会社を経て商業界入社、「食品商業」編集長、「販売革新」編集長などを経て、2011年には商業界取締役就任 チェーンストア各社の社内教育を担当する教育支援事業などを担当。その後、2017年に独立しロジカル・サポート㈱を設立し、2020年にエイジスリテイルサポート研究所所長に就任(兼任)。長年にわたり小売業の現場に関わり、執筆活動と共に、分析や提言も行っている。 従業員教育にも関わりがあり、現場に即した研修には定評がある。

長年にわたり小売業の現場に関わり、執筆活動と共に、分析や提言も行っている。 従業員教育にも関わりがあり、現場に即した研修には定評がある。

エイジスリテイルサポート研究所 所長 三浦美浩

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