「棚卸とは?」 第2回 棚卸でよくある落とし穴
株式会社エイジスはお陰様で棚卸アウトソーシング国内シェアNo.1企業として多くのお客様にご利用いただいております。そんな弊社が、改めて「棚卸とは何か?」「なぜやらなくてはならないのか?」「コツはあるのか、失敗しないためのポイントは?」といった棚卸にまつわる様々なことを、コラムとして数回に分けて連載したいと思います。棚卸にお悩みの企業様、なぜ必要なのかを知りたいといった方のお役に立てれば幸いです。
第2回は棚卸でよくある落とし穴や棚卸を行うときに大変なことを解説いたします。
棚卸でよくある落とし穴
棚卸を行う目的は、「決算と利益確定」と「商品管理とロス」です。しかし、その目的を達成するためにはいくつかの条件があります。
(1)決算と利益確定
棚卸が終わり数値を集計してみると全体の粗利益率で異常値が出たとします。異常と思われる在庫を再調査することになるでしょう。
しかし、大きな差がある場合は棚卸以外に原因がある場合があります。
売価還元法を前提にすれば、「決算と利益確定」に必要な情報は期首期末の実地棚卸以外に、期中に仕入れた商品の原価、数量、売上データ、返品データ(原価)です。
少し意外かもしれませんが、廃棄や、値上下げ情報は利益確定に必要ではありません。仕入れ原価合計と返品原価合計は相殺されるので、これを最終的な仕入原価とします。
すると必要なのは、期首在庫原価合計、期中の仕入原価合計、売上合計、期末在庫売価合計の四つです。
期首と期末の棚卸が正しい前提に立つと、異常値の原因は売上と仕入れデータの中に潜んでいます。
小売業(BtoC)では、売上を誤る、もしくは不正に計上するなんてことはほとんどないでしょう。また、仕入れも取引先からの請求があるため、大きな差は出ないはずです。
このように考えると、やはり棚卸に問題がなければ異常値は出ないはず、という結論になります。
問題があるとすれば、「棚前棚後」と呼ばれる、商品と伝票の日付が棚卸日をまたいで異なる場合です。
棚卸前に商品は入荷したにもかかわらず、納品伝票(データ)の日付が棚卸後になっていた場合は、仕入れデータが実際よりも少なくなるので、粗利益率は高くなります。
これを防ぐ一つの方法は、棚卸日前後の一定期間の納品や返品を禁止することです。もちろん、商品によっては毎日納品しなくてはならないものもあります。しかし、それ以外のものは、このルールを周知して徹底させることでこのような誤りを防ぐことができます。
他にも商品の部門間や店舗間の移動処理の漏れや誤りといったことも珍しいことではありません。
(2)商品管理とロス
それでは、「商品管理とロス」はどうでしょう。こちらはもう少し単純化して考えることができます。商品管理をつきつめていくと最終的には品目ではなく、さらに細かいSKUの管理ということになります。ロスも最終的には金額ですが、その本質は数量です。
一般的にロス金額を求めるためには、期首期末の実地棚卸データを除くと、期中仕入(売価)と期中返品(売価)に売上高、廃棄(売価)、値上げ下げ(売価)それぞれのデータが必要になります。そのうち数量ベースでロスを求めるために必要なデータは値上げ下げ(売価)データ以外です。
数量ベースでみると
期首在庫数 + 仕入数 - 返品数 - 販売数 - 紛失数(ロス数) = 期末実在庫数
ロス数量 = あるべき期末在庫数 - 期末実在庫数(実地棚卸結果)
となります。
「決算と利益確定」と同様に「棚前棚後」でのミスが原因になっているのかもしれません。
仕入数の誤りは出荷・検収の誤りや納品データの誤りが原因と考えられます。返品に関しては、返品したにもかかわらず、伝票起票が漏れていた可能性があります。販売数には間違いがないように思われますが、SKUレベルでの誤りが生じることがあります。品目とSKUは異なります。販売価格も仕入原価も同じで同一品目とみなされるものがあり、食品でいえば「甘口、中辛、辛口」衣料や靴でいえば「S」「M」「L」といったサイズ違いや「赤」「青」「緑」といった色違いです。納品時も販売時も原価と売価が同じだからと誤りを無視したり、レジでの登録を一つ一つではなく、同じものが二つとして登録してしまうことが普通に発生しまいます。多くの人はそれを誤りと認識していません。直接的な不利益にはならないと考えるためです。確かに全体としては相殺されて問題はなさそうに見えますが、商品管理という観点からは、在庫数や販売数量が少ないものなどは欠品や過剰在庫になってしまう恐れがあるため、看過するわけにはいきません。
金額のみの問題でいうと、値上げ下げです。値下げ処理をしないと、その商品が売れようが売れずに、期末棚卸に含まれようが、その分が不明ロスとなります。逆に値上げするとその分だけロスが減り、いわゆる「逆ロス」になります。
最後に廃棄、値下げです。この処理を怠るとそのまま(不明)ロスとして計上されてしまいます。これにより不明部分が増えてしまうため、確実に廃棄値下げ処理をする必要があります。ただし、スーパーマーケットなど新聞折込チラシや月間特売で頻繁に売価変更する場合は手作業で行うことは難しくなるため、システム上の理論在庫を用いるなどの対処が必要になります。値上げ下げデータをどこまで厳密に管理すべきかは、その業務の煩雑さ、すなわちそれに投入される人時を考慮して、それぞれの企業の考え方で行うことで構わないと思います。
ここまでの話したことは、棚卸以前の問題であり、どんなに正確で精度の高い棚卸結果も、その前提条件が満たされなければ、まったく無価値になってしまうということです。
棚卸で大変なこと
(1)棚卸スタッフと棚卸の正確さ
棚卸とは、在庫を調査することです。どこに何がいくつあるかを漏れなく調査して集計をおこないます。そのため多くの人手が必要です。棚卸で大変なことはまず、人手の確保です。店舗スタッフで分担して行うことができれば問題はありませんが、それはまれです。そのため外部から人を調達することが多くなります。では、どのような方法があるか整理してみましょう。
1.(チェーン店であれば)他の店、本部からの応援
2.臨時でアルバイト(最近ならタイミーさん)を雇用する
3.取引先に応援を依頼(無償での派遣要請は優位的地位の濫用となるので注意が必要)
4.アウトソーシング会社の請け負わせる
費用を考慮するのは当然ですが、間違いなく棚卸作業をできるためのスキルが必要であり、そのための事前教育も欠かせません。責任と動機付けも重要です。
2や3の場合、もし棚卸に大きな誤りが発生したとしても特に責任は感じないことが多いのではないでしょうか。また、いずれも棚卸に不慣れという点で正しい棚卸結果を期待することは難しいといえます。
1の他の店舗や本部からの応援者もそれに近い責任感、意識の高さを期待してもよいのですが、自身の店の棚卸を実施するスタッフに比べるとやや希薄になるかもしれません。
4は棚卸専門会社に請け負わせることです。この場合、棚卸スキルは期待できますし、品質面でも一定のレベルが期待されます。さまざまなチェックシステムを持っていることよりも重要なのは専門スタッフの作業レベルです。彼らは、精度と生産性で評価されます。言ってみれば“できるだけ正確に短時間にたくさんの商品をカウントすること”が期待されます。そのため抜き取りチェックによる個人別のカウント精度やカウント記録からの個人別の生産性が明らかになります。メリットが多いですが、当然経費がかかるため総合的な判断が求められます。
いずれにせよ、正確な棚卸結果を得ることを最優先としなくてはなりません。それは上記のように棚卸を誰が行うかという問題以外にもいくつかの課題があります。後で述べますが、正確な棚卸結果を得るためには、スムーズに棚卸を実行する上でも事前教育を含む十分な事前準備が欠かせません。
(2)売上機会の損失
棚卸はわずかな例外を除いて、お客様のいない状態、つまり閉店した状態で行います。そのため棚卸実施時には営業を休む必要があります。それではその日の売上を失うことになりかねません。正月などを除き、多くの店舗では店休日をとらずに営業していますので棚卸のための休業は、単に売上の損失だけではなく競合相手を利することにもなりかねません。
定休日をとらずに棚卸を行う方法としては、開店を遅らせるか閉店時間を早める、閉店後行う、そして例外的なものである営業中の実施が考えられます。営業時間を変えずに棚卸ができればよいのですが、店舗のスタッフで行うことは現実的に不可能です。そのため、閉店後(一般に深夜翌朝まで)棚卸を行う場合には専門会社を利用したアウトソーシングが一般的です。アウトソーシングのコストは、休業による売上損失を含んで考えなくてはなりません。
*営業しながら棚卸を行うわずかな例外としては、24時間営業のコンビニエンスストアがあります。
(3)速やかな結果検証
もう一つの問題は、企業によっては結果が出るまでの時間がかかることです。利益を確定するためには、既に判明している期首の在庫、期中の売上情報に、期中の仕入れ情報に加えて最後に棚卸結果が必要です。そのため、可能な限り早く間違いない集計をすることが必要です。さらに、疑問がある数値については再度確認するといった事後検証が必要です。
ところが、これがなかなか難しいのです。棚卸結果の事後検証のために十分な人間を確保することが難しいこと、更にはどのような点検を行うべきかが決まっていないことが問題です。次に述べる「棚卸の準備」はもちろん大切ですが、棚卸結果の事後検証も「いつ」「誰が」「どのように」行うのかを決めておく必要があり、それが実行可能な人員体制を整えておかなくてはなりません。|棚卸でお困りの方へ
実際に自社で棚卸を行っているけれど、思うように作業が進まずにお困りの方も多いのではないでしょうか?
棚卸でお困りの方へ、少しでも棚卸を楽にするヒントをご紹介します。
(1)棚卸表の無料テンプレート(Excel)を使用する
棚卸表とは棚卸の際に数量や金額等を記入する表のことを指し、決算の確定申告に必要な書類です。棚卸表に正式なフォーマットはありませんが、主に以下の項目を記載する必要があります。
①実施日②商品番号③商品名④数量⑤在庫単価⑥在庫金額⑦在庫状態(破損等)
専用のシステムを導入していない場合、Excelを利用するのが手軽です。
ここで、定番のテンプレートをご紹介します。
ダウンロード後は自社棚卸に必要な項目を追加することも可能ですので、ご自由にご利用ください!
(2)棚卸アプリで自社棚卸を効率化する
棚卸のパイオニアであるエイジスが棚卸アプリ「Easy棚卸」をリリースしました!
お手持ちのiPhoneカメラでバーコードをスキャン、WEBからカウントデータを承認するだけで棚卸が完了します。
新機能も続々追加予定ですので、是非導入をご検討ください。
(3)まるまるプロにお任せする
棚卸のプロ集団であるエイジスが、カウントからデータ納品まで代行いたします!
棚卸業界国内シェアナンバーワンだからこその豊富な実績と技術でお客様の棚卸をサポートします。
ご不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。
作成:全国万引犯罪防止機構理事
工業会日本万引防止システム協会副会長
エイジスリテイルサポート研究所
近江元